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散水試験報告書例8:外壁サイディング施工不良による増設サンルームに大量の雨漏り

〇〇法律事務所

弁護士 〇〇 様

****年**月**日9:00~16:30、✕✕邸にて、大工1名同行のうえ、散水試験を実施しましたので、雨漏り診断士として、結果を報告致します。

はじめに

本件建物において、事前に小屋裏の状況写真を見せていただき、異常な光の入り具合がありました。小屋裏空間は、わずかに小屋裏換気口などの通気のための穴から若干の光が漏れる程度で、ほぼ真っ暗状態であることが通常です。これでは外壁サイディング材の相互に隙間があいていることになります。

後付けのサンルーム・ガレージ内部に雨漏りがあり、建物本体の室内には雨漏りしないとのことです。雨漏りは、雨量・風の向きと強さ・継続時間の条件により、発生します。現場で確認するために、散水試験を実施しました。今回実施する散水方法は、特別な高圧散水でなく、通常のシャワーヘッドで、約30cm離れて散水しています。

1.ガレージ上部

1-1.ガレージ上部の外壁に散水

散水を開始しました。雨水の浸入口を確認するためです。

外壁全体に、サイディング材横目地部分から、5分以内の短時間散水で、水が浸入します。特定の部位からのみの浸入ではなく、外壁全体から浸入します。外壁サイディング材と外壁下葺き材の透湿防水シートとの間から水が浸出します。

1-2.ガレージ内部に水漏り

水漏りが始まりました。雨水の浸出口を確認します。

かなり多量の雨水が浸出します。外壁サイディングの内部側で、外壁下葺き材である透湿防水シートとの取合い部の隙間から浸出します。本件建物は鉄骨部材に直接、透湿防水シートを張り、その上からサイディング材を直接張り付けています。外壁通気層はありません。通気層がないため、外壁サイディング材と透湿防水シートは接しており、いわゆる毛細管現象になり、雨水はスムーズに流れずに滞留する可能性が高いです。通気層なしにも関わらず、浸入した水は一気に浸出して、じゃじゃ漏り状態です。

1-3.通常の雨漏りのメカニズム

通常の住宅建物では、雨仕舞いとして下記のように考えます。

雨漏りは、1次防水+2次防水のセットで考え、1次防水だけでは雨漏りを防ぐことはできません。2次防水(下葺き材)の外側には、雨水が若干流れていることになります。逆に2次防水が完璧な材料と施工であれば、雨漏りは発生しません。

1次防水 外壁材・板金・シーリングなど、外から見える部分
2次防水 捨て板金・下葺き材(外壁:透湿防水紙・アスファルトフェルト など)、外から見えない部分

外壁サイディング材のどこかから内部に、雨水が浸入することは想定内です。若干浸入した雨水を、外壁通気層がある場合には、外壁通気層で排出するわけです。雨水は重力の法則により、高いところから低い方に流れます。通気層がない場合には外壁サイディング材と下葺き材の間の隙間から排出することになります。1次防水でほとんどの雨水を遮断し、若干浸入する雨水を2次防水で遮断するものです。2次防水で遮断できなければ、室内に雨漏り現象が出てきます。

本件建物では、雨水が室内に浸入することなく、2次防水である、透湿防水シートで一応遮断しています。本来は土台水切り上部やサッシ上部からの水の浸出は、2次防水で遮断した若干の水を排出するものです。しかし、通常の多くの建物と比較して、雨水の浸出が異常に多いです。5分以内の短時間散水でも、一気に浸出してくるのは異常です。通常は30分以上の散水により、少しずつ滲み出してきます。

下葺き材の施工が完璧であれば、雨漏りしないことになりますが、どこかに弱点(透湿防水シートの破れ・穴あき・重なり不良など)があれば、雨漏りの可能性があります。本来は外部空間であったところを、サンルーム・ガレージとして、内部空間として取り込んだために、建築主は雨漏り現象として認識しました。それまでは同じ現象が生じていたはずですが、認識されませんでした。

1-4.下葺き材の内部に雨水浸入

土台水切りの上部から、水が浸出してくると、透湿防水シートの外側を流れた水が、土台水切り立ち上がり部の外部から出るため、外部空間であれば、直接の被害はありません。しかし、下記の写真ように、土台水切りの下部から、水が浸出してくるとなると、話は異なり、異常現象となります。つまり、透湿防水シートの内側に水が浸入していることになり、鉄骨の錆や木部の腐食になり、構造体を傷めることになります。この現象は雨漏りになります。土台水切りの立ち上がり部分の外側に、透湿防水シートが被せてあるため、透湿防水シートに沿って流れる水は、土台水切り上部のサイディング材取り合い目地部分の隙間から浸出するはずです。

1棟の建物では、同じ職人が施工するために、同じ納めになることが通常ですから、他の部位でも、透湿防水シートの内部にまで、雨水が浸入している可能性があります。土台水切り下部から浸出しました。

2.サイディング材の隙間と浮き

本件建物の外壁サイディング材は横張りであり、上下に継手が生じます。継手には隙間が大きいところでは3mm以上、隙間がほとんどないところもあります。離れたところから、本件建物の外壁を全景として見ると、外壁サイディングの継手の位置が明確にわかります。通常の住宅では、継手が目立たないように張ります。つまり、サイディング材の上下間の隙間が異常に大きいということです。

外壁サイディング材の上下継手をはさんで、手で叩いてみると、サイディング材が浮いており、ボコボコします。通常はエプトシールというものがサイディング材料についており(工場施工)、外壁施工をすると上下のサイディング材がシール材を押さえ一体化します。遊離しているということは、雨水の浸入の可能性が高くなります。直径3mm前後の半円形のシール材で、雨水の浸入を食い止めています。隙間や遊離していると容易に雨水は浸入します。

3.1F北面に散水

サンルーム・ガレージと無関係の部位ですが、外壁材に散水してみました。同じ仕事の納めをしているので、条件は同じです。5分以内の短時間散水で、土台水切りの上部から浸出してきました。つまり、外壁材のどこに散水しても、容易にサイディング材の内部に雨水は浸入します。養生は、土台水切りに水がかからないようにするためです。

4.サンルーム

4-1.サンルーム上部外壁に散水

散水開始しました。雨水の浸入口を確認するためです。

4-2.短時間散水で水が浸出

5分以内の短時間散水で水が一気に浸出します。じゃじゃ漏り状態です。確かに浸入する雨水の排出口ではありますが、これだけの量の水が一気に浸出するのは異常です。

5.その他(縦目地シーリング劣化状況)

外壁サイディング材横張りの縦目地にシーリングがあります。劣化が進行しており、ひび割れが見えます。散水すると直ちに水が浸出します。これは、経年劣化であり、施工不良とはいえません。シーリング材はメンテナンスが必要で、通常は10年毎に打ち換えます。旧シーリング材を撤去の上、新規にシーリング材を施工しなおす必要があります。

6.まとめ

小屋裏内部から確認すると、透湿防水シートの内部が見えますが、内部までの水の浸入は確認できませんでした。透湿防水シートの外側は、散水による水で湿っています。外壁サイディング材の隙間と浮きにより、透湿防水シートの外側には、異常に多量の水が流れていることが確認できました。

外壁サイディング材の隙間と浮きが原因であると判断します。外壁サイディング施工の不具合となります。外壁サイディング材も材料の特性から、収縮はゼロではありませんが、本件建物の隙間と浮きは、材料の収縮や経年劣化だけとは考えられません。サイディング材料は、一流メーカー製の通常の市販品です。日本国内で多くの住宅建物が同時期に建設され、その外壁に、サイディング材は使用されています。外観を見ても、継ぎ目が本件建物ほど目立っていません。

10数年経過した建物の検査やメンテナンスの立会いで、小屋裏へ入ることは多いですが、外壁の隙間がこれだけ明るく見える建物は、他には認識していません。

7.結論

〇〇弁護士の質問に対する回答です。

散水試験で、明らかにしたいこと

質問1:今回の雨漏りの原因は、外壁からの雨水の浸入によるものか。

回答:サイディング材と透湿防水シートの間に雨水が浸入しています。

質問2:サンルーム内と車庫内に漏れ出した雨水が、それぞれ、外壁のどの部分から浸入したものか、特定できるか。

回答:外壁全体のサイディング材の隙間と浮きから、雨水が浸入するため、複数箇所から浸入し、複数箇所から浸出します。部位の特定は不可能です。

質問3:今回の雨漏りの状況および散水試験からみて、外壁としての一般的な防水性能(基準)を有しているといえるか。

回答:外壁サイディング材の隙間と浮きを原因として、透湿防水シートの外側に多量の雨水が流れるということは、室内に浸出していなくても、建物の耐久性に悪影響を及ぼすことになります。外壁に通気層のない本件建物において、雨降りのたびに複数箇所から浸入した雨水は、完全に蒸発することなく、常時湿気として滞留していると思われます。通常の建物の防水性能とはいえません。

質問4:外壁施工後15年を経過したことによる、外壁の防水性能の劣化の影響はどの程度か。

回答:外壁シーリング材は10年毎に打ち替える必要があります。縦目地のシーリングには既にひび割れが発生しており、今回の散水試験により、縦目地のひび割れ部から水は浸入しています。新築当初は縦目地シーリングの劣化がないため、横目地からの浸入のみだったと予想します。15年経過した現在では、横目地の隙間と浮きからの浸入と合わさり、多量の浸入になっています。程度は不明です。

意見をききたいこと

質問1:✕✕邸の外壁工事には、瑕疵があるか。

回答:新築時の外壁サイディング材に、施工上の問題があり、瑕疵があるという認識です。補修が必要と判断します。

質問2:瑕疵の内容は何か。

回答:外壁全体のサイディング材の隙間と浮きです。小屋裏から見て、異常な光の漏れ方です。

質問3:瑕疵の原因は何か。

回答:新築時の外壁サイディング材の施工において、外壁施工業者の責任が大きいと判断します。サイディング材料は、大手メーカーの一般市販品であり、問題はないと考えます。

質問4:外壁の経年劣化が、瑕疵の原因に寄与していると考えられるか。どの程度か。

回答:縦目地のシーリングのひび割れについては経年劣化で、雨水が浸入しています。サイディング材料自体の経年劣化は、見栄えの問題であり、雨漏りとは関係ありません。寄与の程度は不明です。

質問5:今回の雨漏りの状況および散水試験にあって、外壁の外側にサンルームおよび車庫を施工した場合、サンルームおよび車庫内に雨水が漏れ出すことは予想できるか。

回答:サッシ上部や土台水切り上部は、2次防水としての透湿防水シートの機能を考えると、若干浸入した雨水や結露水の排出口となるために、当然に浸出することが予想できます。ただし、建築工事の施工者としては、これほど多量の雨水が浸入することは予想できなかったと思われます。契約上の当事者である建築工事の施工者に悪意があったとは思えませんが、元請けとして、外壁施工業者に対し下請け業者として発注したものであり、元請け責任を逃れるものではありません。

質問6:質問5の場合に、サンルームおよび車庫の工事を行ったこと自体に、瑕疵はないか。

回答:外壁に取り付ける、サンルームおよび車庫の工事は特別なものではなく、数多くの現場で通常に施工され、特別に問題はおきていません。今回は外壁サイディング施工の不具合により、多量の雨水がサイディング材と透湿防水シートに間に浸入するという特別な事例であり、工事を実施したこと自体に瑕疵はないと思います。結果論として、「若干の雨水は浸出する可能性があります」程度の説明は必要だったと思いますが、これだけ多量の水が浸出すると、説明の意味がありません。

8.補修方法の提案

現状のサンルーム・ガレージの屋根と外壁サイディング材の取り合いにおいて、サイディング材を横1枚分はがし、下葺き材の透湿防水シートをめくって、新たに水切り板金を設置し、水切り板金立ち上がり部の外側に、透湿防水シートを被せます。これにより、サイディング材の内部に浸入する雨水を、屋根上の外部空間に排出することができます。

外壁の化粧としては、サイディング材の同じ柄で、部分的に張り替えるとよいのですが、経過年数からして、同じ柄のサイディング材は、廃盤になっている可能性が高いです。サンルームの上面である東面全面と、ガレージ上面である南面全面が、補修必要部位となりますが、東面と南面の2面のみ張り替えると、同じ建物の外壁で北面・西面と仕様が異なることになります。

今回の散水試験により、本件建物の外壁全面にわたり、サイディング材の内部にまで雨水が浸入していることが明確になりました。外壁補修は東面・南面の2面のみではなく、4面全面において補修が必要と考えます。

施工方法ですが、現在のサイディング材をそのまま残し、上から透湿防水シートを施工し、軽量な金属系サイディング材を被せて施工する方法があります。いわゆる「カバー工法」となります。現状と同じ窯業系サイディングでは重量があり、2重になると後施工のサイディング材の固定方法に強度上の問題が残りますので、金属系のサイディングを推奨します。

室内に雨漏りが認識されていないとしても、現在の外壁サイディング材の内部に、多量の雨水が浸入し、壁内に滞留する可能性が高いということは、建物の耐久性に悪影響を及ぼしています。写真17~写真19に見られるように、下葺き材内部にまで雨水が浸入している部位が、他にも存在する可能性があります。外壁4面全面に、透湿防水シートおよび金属系サイディングを、カバー工法にて施工するべきです。

現状の外壁材・シーリング材は既にメンテナンスの時期を過ぎており、劣化が進行していますので、対応が必要です。

なお、施主様から、外壁の再塗装を行いたい旨の話がありましたが、雨漏りを再塗装により止めることはできません。雨漏りを止めてから、再塗装を行うべきです。

(以上)

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