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散水試験報告書例12:鉄骨造4階建て工場の雨漏り

はじめに

社屋にて発生している雨漏り現象について、散水試験を実施して、雨漏りの原因調査を依頼されました。

本件建物は、平成**年建築の鉄骨造4階建ての工場であり、屋上仕様は防水、外壁仕様は吹付仕上げです。

****年**月**日、大阪府建築士会電話相談(〇〇一級建築士対応)

****年**月**日、大阪府建築士会現地相談(玉水新吾一級建築士・✕✕一級建築士対応)

****年**月**日、現地にて、散水試験実施(玉水新吾一級建築士・坂元康四郎雨漏り診断士対応)

1.雨漏りのメカニズム

雨漏りは、下記の4つの条件の組み合わせにより、発生します。

①雨量

②風の向き

③風の強さ

④継続時間

したがって、風がふかない場合には、上から下へ降る雨だけになり、雨漏り現象が現れない場合も多く、大型台風でスピードが遅く直撃する場合などは、一般に①雨量が多く、②風の向きはほぼ全方向、③風の強さは強く、④継続時間はそれなりに長くなり、雨漏りに対しては最悪の条件となります。雨水は上から下へ降るだけではなく、風の影響で、横から、場合によっては下から上に向かって舞い上がる場合もあります。

2.散水試験実施

雨水の浸出口に対して、雨水の浸入口をピンポイントで適切に見つける必要がありますので、散水試験を実施して雨漏り現象を再現していきます。本件建物には、耐火被覆として発泡系断熱材が吹きつけられており、雨水が浸出しにくい状態になっています。浸入口と浸出口の垂直方向位置が離れており、判明しにくい状態でした。散水試験実施により、雨漏り現象が再現出来たところのみを記載します。

雨水浸入箇所1:南東角屋根軒先

屋上の南側東角部の軒先面戸に散水しました。室内側から軒先部分を見ると隙間があり、外部の明かりが見えます。耐火被覆断熱材で見にくいです。

折板屋根と軒先面戸部材と間に隙間があります。その隙間に散水しています。

1F作業場床Aに水が浸出してきました。鉄筋コンクリート基礎(腰壁)上部を水平方向に水が走り、ひび割れ部から流れています。時間経過するとビニール袋に水が溜まっています。

約1時間経過後、その横のB・Cにも水が浸出してきました。浸入口は南東角屋根軒先であり、浸出口が複数になります。鉄筋コンクリート基礎上部を水平方向に水が走るためです。柱型とALC壁の目地部分を伝わって水滴がでてきます。

雨水浸入箇所2:南面軒先面戸(複数)

雨水浸入箇所1から離れて、南面軒先面戸の数カ所に散水しました。4Fの鉄骨部材にサーモグラフィーカメラの反応があります。雨水浸入箇所1と同じように鉄筋コンクリート基礎の上部からひび割れ部D・E部に浸出し、床に水溜りができました。F部には浸出せず、再現できませんでしたが、時間をかければ浸出する可能性は高いです。軒先面戸は同じ仕様・同じ納まりであり、全体に雨漏りの可能性があります。

面戸には隙間があり、散水しています。上から降る雨だけではなく、風が強いと横から雨が吹き付けるためです。屋上は地上から約20mの高さで、風が強いものと思われます。耐火被覆材が濡れてきました。

他からも浸出してきました。

本件建物において、軒先面戸部分の納まりは、風がなければ漏れることはないと思いますが、風が吹くと雨水浸入の可能性が高いと思います。風向きにより、軒先面戸部分全箇所の隙間から雨水浸入の可能性があります。

今回は足場設置なしで散水調査したため、安全上面戸の写真が撮りにくいので、他の部位の写真です。折板屋根と面戸部材には隙間があります。風が吹けば雨水は浸入します。

雨水浸入箇所3:東屋根南方向パラペットのビス浮き

一部ですが下地のALC材に固定するビスが浮いています。

4Fの屋根下の梁の耐火被覆材が濡れてきました。1Fには出ません。

温度差を検知するサーモグラフィーカメラにも反応があります。しばらくすると耐火被覆材から雫がたれてきました。周囲の棚板合板に雨漏り跡があります。

雨水浸入箇所4:西屋根パラペット天端笠木

西側屋根笠木板金の下から数カ所に散水しました。笠木下部から外部側に水が流れ、下方向に垂れています。4Fの耐火被覆材が濡れてきました。サーモグラフィーカメラにも反応します。約60分経過後1F床Gにも浸出しました。勾配の最上部にも散水しましたが、水圧不足で適正な散水ができず浸出しません。

その他

シャッター

外部に段差がなくフラット状態であり、シャッター下部コーナーに隙間がありますので、散水していませんが容易に雨水は浸入します。凹状のパッキン部材を地面に取り付け水の浸入を防止します。

プラットホーム屋根からの漏水

集中豪雨のときにオーバーフローの可能性もありますが、3本の縦樋があるため、排水容量はあると思います。原因不明です。

1F浸出口の近くである外壁下部からの浸入を考えましたが、既にかなり雨漏り対策補修をされており、浸入口の候補が見つかりません。

雨水浸入位置1,2,3,4 略

雨水浸出位置ABCDEFG 略

3.結論

**/**の散水試験実施により、社屋の雨漏り現象が再現できました。雨漏りの証明ができた部位は下記の4箇所で、雨水浸入は確実です。

雨水浸入箇所1:南東角屋根軒先
雨水浸入箇所2:南面軒先面戸(複数)
雨水浸入箇所3:東屋根南方向パラペットのビス浮き
雨水浸入箇所4:西屋根パラペット天端笠木

4.おわりに

雨漏りの原因追求は難しく、雨水の浸出口は1箇所であっても、浸入口は複数個所ある場合も多く、今回の散水試験により、雨水浸入の全箇所を適正に見つけられなかった可能性もあります。今回は1日だけの散水試験で実施しましたが、更に時間をかけると別の部位からの雨水浸入も充分に考えられます。破壊検査をしていませんので、充分な検証はできていません。雨漏り浸入箇所の候補が多く、完全に実施するには更なる時間も必要です。基本的に折板屋根面戸などは、同様の納まりで施工するために、同じ納まりの部位では雨漏りが1箇所のみではありません。風向きによって雨漏りしていないだけの可能性もあります。

他の部位からは雨漏りしないという証明は、通称「悪魔の証明」と呼ばれるもので、証明できません。散水を強くしたり、時間を長くしたり、向きを変えると雨水浸入の可能性があります。30分散水して漏れなくても、1時間散水すると漏れる場合もあります。1時間散水して漏れなくても2間散水すると漏れる場合もあり、基準があるわけではありません。雨漏りが再発した場合には、再度散水試験から実施することになります。

以上、報告します。

玉水新吾

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