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意見書例2:共同住宅の雨漏り補修方法の悪質な瑕疵

鉄骨造ALC外壁3階建て共同住宅の雨漏り補修について、妥当性の見解を求められました。

2015年11月13日(金)9:30~11:00現地にて、現状把握のための立会い確認(立会者:〇〇様・玉水新吾・坂元康士朗)を実施しました。結果を報告致します。

1.はじめに

本件建物は、鉄骨造ALC外壁3階建ての共同住宅であり、建築後約30年経過している状態です。2年前に雨漏りしたために、施工業者に補修を依頼しましたが、補修方法に疑問があり、雨漏り再発の可能性があるとのことで、部分的に足場架設の上、屋根面の確認および小屋裏の確認を行いました。

2.結論

本件建物の雨漏り補修方法は、屋根カラーベスト材のジョイント部分に全面シーリング施工、屋根材の上部から脳天ビス打ちの上シーリング施工という、通常の建築で実施する雨漏り補修方法では考えられない方法で施工されています。浸入する雨水の排出口を塞ぎ、滞留します。下葺き材である防水シートに貫通穴を開けています。現在も雨漏り現象の可能性は否定できず、シーリング材の劣化とともに、雨漏りは再発します。本件建物には、「野地板の張替え」・「屋根下葺き材の張替え」・「屋根材の張替え」が必要であると判断します。

3.理由

3-1.雨漏りのメカニズム

雨漏りは、風の向きと強さ、雨量、継続時間の4つの条件により発生します。

「1次防水」+「2次防水」のセットで考える必要があります。

1次防水 屋根材・板金・シーリングなど、外から見える部分
2次防水 捨て板金・下葺き材(アスファルトルーフィングなど)、外から見えない部分

屋根材のみといった1次防水だけでは、雨漏りを完全に防ぐことはできません。屋根材の隙間から若干浸入する雨水を、2次防水で防ぎます。2次防水の上には雨水が若干流れていることになります。逆に2次防水が、完璧な材料と施工であれば、雨漏りは発生しません。

雨水の浸入を、屋根瓦や板金などの1次防水で、できるだけ防ぎます。防ぎきれない若干の雨水については、下葺き材の2次防水で防ぎます。建物本体を傷めないうちに、速やかに雨水を排出します。建築において、雨水を一切浸入させないことは難しく、若干の浸入を許容し、浸入した雨水を適切に排出するという考え方が必要です。2次防水を突破した雨水が、雨漏りになります。

雨は上から下に降るだけとは限らず、風により、横からはもとより、下から上に舞い上がって降る場合もあります。雨水は極めて小さな隙間からも浸入します。

3-2.屋根上からの確認

1.屋根面のシーリング状況

屋根材料のカラーベスト全面に、シーリング施工されており、雨水の浸入口を塞ぐと同時に、本来必要な雨水排出口も完全に塞いだ状況になり、雨水が滞留することになります。この補修方法は重大問題で、「瑕疵」に相当するものと考えます。

屋根にはシーリングの必要な部位もありますが、これでは屋根材の下部で、雨水が排出できずに滞留していると思われます。雨水が部分的にしろ、滞留するということは、下葺き材であるアスファルトルーフィングの下面まで、雨水が浸入する結果となり、野地板の腐食につながります。建物の耐久性を著しく低下させることになります。

2.シーリング材の劣化

下記のグラフは終日直達日射量を示しています。特に夏場の屋根面は紫外線が多く、劣化が激しくなります。壁面でも南面の劣化は多く、北面の劣化は少ないことになります。シーリング材はメンテナンスとして、通常10年ごとに打ち替えることになっていますが、シーリング材の幅と深さが適正でかつ、接着性を確保するプライマー施工がなされた場合の話です。本件のように、三角形になすられたシーリング材や、プライマー施工が適正でない場合には、耐久性は当然低下することになります。

3.屋根材に脳天ビス打ち固定

屋根材の上部からビス留めされています。理由は不明ですが、屋根材の浮き(暴れ)を抑えるために施工したものと思われます。屋根材(下葺き材である防水シート含む)に穴を開けるわけで、雨漏りの可能性が高まります。そのために上からシーリング材を施工したものと思われます。ただこのシーリングはビス頭を隠す程度になすったもので、耐久性は期待できませんので、劣化は早いものと思われます。隙間を埋めたシーリング材を切断して、雨水を排出することも検討しましたが、30年を経過した下葺き材は経年相当の劣化が進行しており、多くの不要な穴を開けた以上、取り替えるべきだと思います。

4.屋根材の塗膜の劣化

雨漏りと直接の関係はありませんが、屋根材の再塗装工事中において、塗装の乾燥していない間に雨などあった可能性があり、部分的に塗膜が劣化しています。

5.トップライト周り

トップライトの施工は、屋根に穴を開け、トップライト部材との取合いを設けるため、雨漏りしやすい部位です。本件建物のトップライト部材はかさ上げされており、雨漏りに対して一項の配慮がされています。周囲の板金の最下部はシーリングで埋められておらず、板金下部に若干浸入した雨水は適正に排出可能です。この部位のシーリングを施工しないということは、雨仕舞いがわかっているはずです。ただし屋根材下部にまで浸入した雨水は排出不能です。

6.軒先周り

軒先の板金はシーリングされておらず、一応の雨水の排出は可能です。通常の納まりといえます。

7.ケラバ周り

目視可能な部位の野地板合板は劣化しており、ボロボロになっています。合板の各層が遊離しており、剥がれる状況です。

3-3.小屋裏内部からの確認

1.野地板の雨漏り跡

小屋裏に入ると、湿気は特に酷くはなく、通常の環境です。野地板には雨漏り跡が多数あります。白い塗料を部分的に塗ってある理由は不明ですが、雨漏り跡を隠している可能性もあります。上部(棟近く)の野地板は劣化が少なく、雨水の集中する下部の方に雨漏り跡が多いです。ペンキは雑な塗り方で、雨漏り跡を完全に隠しきれていません。塗料の中には薬剤が配合され、防藻・防蟻・防虫・防カビ・防腐・撥水効果などを意図したものもありますが、写真のような塗り方を見ると、その効果はないと思います。

2.構造体の雨漏り跡

小屋組み材の一部に雨漏り跡がありますが、量は多くはありません。

3.カラーベスト固定釘と脳天ビス打ち

屋根材のカラーベスト固定用スクリュー釘は通常のもので、問題はありません。若干の雨漏り跡もしくは結露跡は見受けられますが、通常の許容範囲内のものです。今回新たにカラーベストの上部から脳天ビス打ち施工したビスについては、余分な穴を下葺き材である防水用のアスファルトルーフィングに穴を開けたことになり問題です。

若干の雨水染み跡があります。屋根材直下の温度はかなり上昇するため、30年経過したアスファルトルーフィングは劣化もしており、穴を開けると雨漏りの可能性が増加します。

4.小屋裏天井断熱材

天井断熱材は天井下地の上に、敷かれるべきものですが、現在は異常な状況(時期は不明)です。断熱材は湿気が浸入しないように、室内側(天井石膏ボード側)に防水性能のあるハトロン紙印刷面、小屋裏空間側に銀色の遮熱フィルムを張ったもので、上下の向きを考慮して、設置することが本来です。

しかし、現状は、遮熱フィルムをわざわざ剥がし、ロックウールが剥き出し状態で、上向きに部分的に設置されているところがあります。これは、雨水が浸入した際に、ロックウールが吸水することにより室内に現れないように実施した可能性があります。遮熱フィルムがあると、雨水が垂れることを考えて剥がしたものと思われます。野地板の雨漏り跡の直下部分にのみ、断熱材が敷かれている所もあります。

断熱材のないところも多く、雨漏りとは直接関係ありませんが、3Fの居室はかなり断熱性能が悪いものと思われます。エアコンの作動でしのいでいることになります。

3-4.その他

雨漏り・結露水・漏水などにより、水分の供給がある場合は、シロアリが繁殖する可能性が極めて高くなります。日本では、一般にヤマトシロアリとイエシロアリの2種類が問題になります。イエシロアリは激烈で、市内にも存在します。シロアリが発生する現場を調査すると、雨漏りなど何らかの水の供給がある場合が多いです。

防蟻処理の薬剤の変化ですが、環境に優しい薬剤処理で対処しており、シロアリに対する効果は低下しています。雨漏りはその被害を雨漏りだけではなく、内部結露など水分の供給から、シロアリ被害という2次被害を及ぼす可能性があります。劣化が早まり、建物の耐久性に著しく悪影響を及ぼすことにつながります。

4.まとめ

本件建物の屋根補修方法は、正常な補修ではなく、問題があります。

「野地板の張替え」・「屋根下葺き材の張替え」・「屋根材の張替え」が必要であると判断しますので、参考見積もりを添付します。

元の補修した施工業者以外の業者が、新規に補修工事を実施すると、元の施工業者の責任の所在が曖昧になりますので、確認願います。

以上報告します。

玉水新吾+坂元康士朗

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