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散水試験報告書例7:RC造住宅の多数の雨漏り個所

〇〇様邸の雨漏り調査依頼を受けました。

****年**月**日、現地下見確認。〇〇様、✕✕弁護士+玉水が立会い。

****年**月**日、〇〇様、坂元+玉水が現地確認散水試験見積り。

****年**月**日~**日、〇〇様邸において玉水新吾が、雨漏り診断士1名(㈲グラス・サラ 坂元康士朗)+大工1名同行の上、散水試験を3日間実施しました。〇〇様邸の雨漏り現象を再現し、雨水浸入状況を確認しましたので、雨漏り診断士として、結果を報告致します。

1.はじめに

雨漏りは、下記の4つの条件の組み合わせにより、発生します。

①雨量

②風の向き

③風の強さ

④継続時間

したがって、風が吹かない場合には、上から下へ降る雨だけになり、雨漏り現象が現れない場合も多く、大型台風でスピードが遅く直撃する場合などは、一般に①雨量が多く、②風の向きはほぼ全方向、③風の強さは強く、④継続時間はそれなりに長くなり、雨漏りに対しては最悪の条件となります。また、雨水は上から下へ降るだけではなく、風の影響で、横から、場合によっては下から上に向かって舞い上がる場合もあります。

平家建てや総2階建て等で、切妻屋根や片流れ屋根等のように、屋根1面に「取合い」のない場合には、雨漏りの可能性は低いですが、外壁と屋根の取合い、バルコニーや穴をあける部位(例えば、サッシ・設備配管貫通部等)がある場合には雨漏りの可能性が高くなります。

本件建物は、鉄骨造2階建て、大規模改修後約6年経過です。喜多川様への聞き取り調査では、地下ガレージ内・1F和室広縁・リビング・キッチンに雨漏りがあるとのことです。

2.散水試験実施

雨水の浸出口に対して、雨水の浸入口をピンポイントで適切に見つける必要がありますので、散水試験を実施して雨漏り現象を再現していきます。本件建物には、発泡系断熱材が吹きつけられており、雨水が浸出しにくい状態になっています。散水試験実施により、雨漏り現象が再現出来たところのみを記載します。

①雨水浸入箇所:ガレージ 西側RC壁ひび割れ

貫通ひび割れ部に貯水すると即水位低下しました。散水すると、約10分の短時間散水でガレージ内部壁に浸出しました。エポキシ樹脂の注入などが必要です。

②雨水浸入箇所:ガレージ 南側RC壁ひび割れ

貫通ひび割れ部(ひび割れ幅約0.3㎜)に散水すると、約10分の短時間散水でガレージ内部壁に浸出です。エポキシ樹脂の注入などが必要です。

③雨水浸入箇所:ガレージ 上部土間(デッキ下部)

デッキ材を撤去して、ガレージ上部土間全面に貯水しました。ガレージ室内側の鉄骨部材に浸出してきました。ガレージ上部土間について、部分的に塗布防水されていますが、全面防水すべきです。土間の場合はよいですが、下部にガレージ空間がある場合には防水が必須条件です。

RC擁壁部のジョイント部に浸出してきました。浸出箇所が拡がってきました。

④雨水浸入箇所:1Fキッチン 外壁のRC壁取合い

建物外壁とRC壁の取合いになり、雨漏りしやすい部位となりますので、散水しました。約10分の短時間散水により、雨水がガレージ外部軒裏天井から浸出して、ガレージ前の土間に大量に垂れ出しました。土間に雨跡があります。

⑤雨水浸入箇所:1Fキッチン 上部下屋取合い軒先端部

キッチンコンセントからの浸出を目視確認しました。

⑥雨水浸入箇所:2F子供室1 バルコニー袖壁入隅水切り

1F和室広縁点検口から確認しました。発泡系断熱材が吹付けられており浸入口直下に浸出せずに離れて浸出します。

⑦雨水浸入箇所:2F子供室2 サッシ下端コーナー南

雨水浸出を1F和室広縁点検口から確認しました。

⑧雨水浸入箇所:2F子供室2 サッシ下端コーナー北

1F和室広縁点検口から確認し、⑦とほぼ同じ位置(50cmずれ)に浸出しました。

⑨雨水浸入箇所:F廊下 ドア正面バルコニー腰壁ひび割れ

既に1Fトイレ壁クロスにめくれ・雨シミがあります。過去に雨漏りしていたものと思われます。1Fトイレ点検口から雨水浸出を確認しました。その後にトイレサッシ額縁から浸出しました。

⑩雨水浸入箇所:2F廊下 ドア近くバルコニー腰壁ひび割れ

1Fトイレ点検口から雨水浸出を確認しました。

⑪雨水浸入箇所:2F廊下 ドア枠下部コーナー

1F和室広縁点検口から確認しました。

⑫雨水浸入箇所:主寝室 中連サッシ下部コーナー

リビング北点検口から浸出を確認。

⑬雨水浸入箇所:主寝室 掃出サッシ下部コーナー

リビング中央点検口より浸出確認、Kダウンライト近くにも浸出。

⑭雨水浸入箇所:主寝室 東側縦長サッシ下部コーナー

リビングのダウンライトから勢いよく浸出しました。リビング南点検口より確認しました。

⑮雨水浸入箇所:2F主寝室 南側縦長サッシ下部コーナー

リビング南点検口より確認。

⑯雨水浸入箇所:2F主寝室 ウォークインクローゼット小サッシ

K周辺にポタポタ音のみ聞こえますが、目視確認できません。サーモグラフィーカメラに反応しました。含水率計は39.1%(雨水浸入がなければ10%以下)になりました。

⑰雨水浸入箇所:2F主寝室 バルコニー下屋取合い

リビング南点検口より1m南に浸出確認。

⑱雨水浸入箇所:2F主寝室 バルコニー下屋取合い板金(車庫屋根上)

リビング南点検口より直上に浸出確認。

⑲雨水浸入箇所:2F主寝室 バルコニーFRP防水膨れ

2019/08/15台風10号による雨水滞留と思われるFRP防水層が膨れています。膨れを手で押すと水が噴出しました。喜多川様が噴出状況を目視確認しました。

リビング南点検口から確認。滞留水の為に少しずつ永く浸出します。

⑳雨水浸入箇所:2F主寝室 バルコニー腰壁のタイル取合い

リビング南点検口より確認。

3.結論

**/**の散水試験実施により、〇〇様邸の雨漏り現象が再現できました。雨漏りの証明ができた部位は下記の20箇所で、これらの部位からの雨水浸入は確実です。

①雨水浸入箇所:ガレージ 西側RC壁ひび割れ
②雨水浸入箇所:ガレージ 南側RC壁ひび割れ
③雨水浸入箇所:ガレージ 上部土間(デッキ下部)
④雨水浸入箇所:1Fキッチン 外壁のRC壁取合い
⑤雨水浸入箇所:1Fキッチン 上部下屋取合い軒先端部
⑥雨水浸入箇所:2F子供室1 バルコニー袖壁入隅水切り
⑦雨水浸入箇所:2F子供室2 サッシ下端コーナー南
⑧雨水浸入箇所:2F子供室2 サッシ下端コーナー北
⑨雨水浸入箇所:2F廊下 ドア正面バルコニー腰壁ひび割れ
⑩雨水浸入箇所:2F廊下 ドア近くバルコニー腰壁ひび割れ
⑪雨水浸入箇所:2F廊下 ドア枠下部コーナー
⑫雨水浸入箇所:2F主寝室 中連サッシ下部コーナー
⑬雨水浸入箇所:2F主寝室 掃出サッシ下部コーナー
⑭雨水浸入箇所:2F主寝室 東側縦長サッシ下部コーナー
⑮雨水浸入箇所:2F主寝室 南側縦長サッシ下部コーナー
⑯雨水浸入箇所:2F主寝室 ウォークインクローゼット小サッシ
⑰雨水浸入箇所:2F主寝室 バルコニー下屋取合い居
⑱雨水浸入箇所:2F主寝室 バルコニー下屋取合い板金(車庫屋根上)
⑲雨水浸入箇所:2F主寝室 バルコニーFRP防水膨れ
⑳雨水浸入箇所:2F主寝室 バルコニー腰壁のタイル取合い

〇〇様邸は、多くの部位から雨水が浸入しています。雨漏りはカビの発生になり、カビを食するダニの発生につながり、ヒトの健康を害することになります。雨水が供給され続けるということは、やがて木部に対し白蟻発生につながります。

これだけの雨漏りがあるということは、通常の建物の基本的性能を満たしているとは思えません。台風襲来・集中豪雨などの厳しい条件でない通常の雨降りの場合でも、雨水は浸入しているものと思われます。

雨水浸入口(略)

4.補修工事

早急な対策が必要です。一度発生した雨漏りについて、雨水の浸入部位を全箇所適切に見つけることは難しいです。1箇所でも見つけ切れなかった場合には雨漏り現象が再発します。また、雨漏り補修も難しく、再発する可能性が高いです。通常は、雨が漏る部位のみを補修しますが、雨が漏れていなくても同じ納めで施工している部位も多数ある為に、雨が漏れる可能性があります。

雨漏り補修工事完了後であっても、雨漏り現象再発の可能性があるために、相当の経過観察期間が必要となります。

5.終わりに

今回の散水試験を実施して、多くの部位から雨水が浸入していることが明確になりました。雨漏りの原因追求は難しく、雨水の浸出口は1箇所であっても、浸入口は複数個所ある場合も多く、今回の散水試験により、雨水浸入の全箇所を適正に見つけられなかった可能性もあります。今回は3日間の散水試験で実施しましたが、更に時間をかけると別の部位からの雨水浸入の可能性もあります。断熱材施工により雨水浸出確認が難しく、天井点検口も新設せず、破壊検査もしていませんので、充分な検証はできていません。基本的にサッシ取り付けなどは、同様の納まりで施工するために、同じ納まりの部位では、雨漏りが1箇所のみではない場合もあります。風向きによって雨漏りしていないだけの可能性もあります。

以上、報告します。

玉水新吾

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