ライフサイクルエネルギー
下記の4段階全部のエネルギーを合計したものがライフサイクルエネルギー(LCE)です。LCEを最小にすることが、環境にやさしいことになります。方法はたったの1つしかありません。
燃費の良い住宅(断熱性能の良い住宅)をつくり、永く使用すること。
第1段階 | 建設前、建築材料を作るにもエネルギー |
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第2段階 | 建設工事に、多種多様な材料を大量に使うエネルギー |
第3段階 | 生活時、冷暖房・給湯・照明・電化製品のエネルギー |
第4段階 | 建物を解体撤去して、産業廃棄物にする際のエネルギー |
建物が傷んだら補修します。雨漏りなら、まず、雨漏りしない建物をつくります。雨漏りしたならば、適正に補修します。施工業者には、雨漏りしている建物を適正に補修できる実力が求められます。大量生産・大量消費・大量廃棄型の建物を、受け入れては不可です。家族構成の変化があれば、条件が変わります。10年先の年齢は、+10歳ですから、どういう状態になっているか間違いなく予測できます。予測と言っても、外れない予測になります。
お金持ちの知人で、高級住宅街の広大な敷地に立派な豪邸を新築した方がいます。新築当時の家族構成は、両親夫婦+本人夫婦+子供数名と3世代の多人数で住んでいました。やがて子供達は成長してそれぞれの家族を持ち、家を出ていきました。両親は亡くなりました。今の本人夫婦はそれぞれ80歳を超えた老人ですが、使用する部屋はリビング+寝室+水回りのみで、他の部屋は全てが物置き部屋になっています。完全に家を持て余しています。
皆で一緒に住める期間は永くはありません。将来の家族構成も考えて家の規模を考えなければなりません。子供が成長して夫婦になっても、親夫婦と一緒に過ごすことが少なくなった現在、結果的には家族で過ごすと言っても老夫婦だけで過ごす時間が最も永くなるという場合が多いように思います。
昔は大きな家はステイタスであり、憧れましたが、実質的には予備室的な部屋は活用されることが少なく不要です。もっと延べ床面積の少ない家で良かったと思われます。
日本の税制システムでは、住宅減価償却期間(木造:22年、RC造:47年)として、古い建物の固定資産税は安くなります。新築すると固定資産税は高くなります。永く使用すると値打ちがあります。古い建物を購入して大規模にリフォームすると新築よりも安く住むことができます。しかも固定資産税は古いままで安いです。
日本では、
建物の価値はいずれなくなる⇒メンテしない⇒価値が下がる、の繰り返し
社会資産としてストックされない⇒中古住宅市場規模は小さい
という流れになっています。
最初の設計段階から、スケルトン部分と、インフィル部分を明確に分けて設計します。
スケルトン | 構造躯体で耐久性が高く、将来にわたって、改造しない。長期的視点で強度・耐久性を考え、躯体設計する。コストをかけるべき。 |
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インフィル | 内装・設備のことで、可変性があり、自由に取替え可能。建物の付加価値となる部分で、将来リフォームするところ。コスト削減可能。 |
インフィル部分のメンテナンス・リフォームを繰り返していくと、建物は半永久的に、もつことになります。わずか30年で終わるものではありません。
LCEの中で最も大きいのが、第3段階の生活時、冷暖房・給湯・照明・電化製品のエネルギー使用です。この対策としては、断熱性・気密性の性能の良い建物をつくり、永く住み続けると、費用対効果が優れてきます。