シーリング
シーリングは便利な材料であり、多くの職種の多くの職人が愛する材料として重宝されています。シーリングの施工が適切であれば、簡単に作業でき、雨水が一応止まるのです。ただし「仮止め」になります。シーリングは経年劣化があり、一般に耐用年数は10年程度になります。紫外線の量により、劣化にバラツキがあります。「終日直達日射量」という資料があります。水平面は劣化が激しく、北面は劣化が圧倒的に少なくなります。ただし、これは適正にシーリングが施工された場合の話です。
シーリング施工箇所の幅・深さ・接着性をよくするためのプライマー施工の有無と乾燥時間確保・2面接着と3面接着の区別など適正に配慮された場合のことです。
簡単に行う通称△シーリング(なすくりシーリング)と称されるやり方は〇ではなく、文字通り△です。
日本シーリング材工業会では「戸建住宅の品確法に対するシーリング防水保証の考え方」の中で、「目地の納まりは、目地幅10㎜、目地深さ8㎜以上を標準とする」としています。
2面接着の場合、目地幅が広すぎると シーリング材の充てん作業が困難になり、狭すぎると確実に充てんすることができません。シーリングの深さは、浅すぎると接着面積が不足し剥離の原因になります。逆に深すぎると、硬化遅延による損傷が発生します。
シーリング材の接着性をよくするプライマーですが、液体に色がついていないために、塗ったか塗っていないのか分かりにくいのです。職人に「プライマー塗ってくれた?」と聞きますと、必ず「塗りましたよ」と返ってきます。
外壁通気工法の場合、サッシ上部枠に水が滞留している可能性があります。外壁通気層を流れる水の出口を塞ぐことは不可です。排出口として開けておかなければならないところを塞ぐと、排出できない水は滞留して建物に害を及ぼし、雨漏り現象として室内に露呈します。
2面接着と3面接着
「ワーキングジョイント」と称されるもので、木造・S造の場合で、サッシ周辺やパネル目地のように、被着体の動きが予想されるジョイントです。この場合は、シーリング材の損傷を防止するために、2面接着とします。動きに追随してくれます。建物には、温度による収縮、乾燥による収縮、地震・台風といった横からの力がかかります。さらには前面道路を走る車の振動も加わり、常時動いていることになります。もし3面接着とすると、硬化したシーリング材に割れが生じて漏水の原因となります。バックアップ材やボンドブレーカーと呼ばれるもので、縁を切り、目地底とシーリング材を接触さないためです。
ここで、2面接着と3面接着について確認します。シーリング工事では重要な概念です。
2面接着 | 目地の両サイドのみ接着し、底面は接着しない。 |
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3面接着 | 目地の両サイドと底面に接着する。 |
2面接着にする方法により、建物の揺れ・伸縮等の動きに追随(底面は滑る)し、防水性能を確保します。バックアップ材やボンドブレーカーと呼ばれるものは、3面接着を避ける目的で、シーリング材と目地底面を接着させずに、性能を低下させないものです。
「ノンワーキングジョイント」と称されるものは、ワーキングジョイントとは異なり、RC造のコンクリートの打継ぎ目地のように、被着体の動きが予想されないジョイントです。この場合は、水の通り道を遮断するために3面接着とします。シール部分で雨水の浸入は止まり、大きな漏水を防ぐことができます。もし2面接着としますと、ひび割れから浸入した水はバックアップ材やボンドブレーカーを通り道として漏水の原因になります。
シーリングのメンテナンス
①旧シーリングを全く撤去せずに、上から新シーリングを施工。
②旧シーリングを取れるところだけ取り、上から新シーリングを施工。
③旧シーリングが固くなっている場合は削り取り、ほぼやり直す
基本的には③が正解であるはずですが、この割合は10%もないと言われています。多くの場合で、シーリングの完全撤去は難しいのですが、現状のシーリングの上から塗り足しています。取り敢えずシーリング工事で簡単に施工されがちということになりますす。
雨水の排出口を塞いだ例
カラーベスト屋根の重なり部にシーリングを施工し、雨水の排出口を塞いだ失敗事例で、毛細管現象による雨漏りになっています。
雨漏りがするということで、カラーベスト相互の重なり部分に、雨水の浸入口と認識してシーリングを塗りまくって塞ぎました。施工者はこれで雨漏りしないはずですといって帰りました。しばらくすると雨漏りは再発し、前よりも更に酷く漏るようになりました。これは雨水の浸出口としても同時に塞いだことになります。やってはいけない施工です。
現場では、水が滞留するということは絶対に不可となります。